北方型住宅技術指導

第2回北方型住宅賞 受賞作品

審査講評 審査委員長:大垣直明(藤女子大学大学院・教授)

 いずれの応募作品も住宅の技術・性能に関して十分確保されていましたから、審査の主眼を外観デザインの地域との合致や魅力、内部空間の充実および北国らしい豊かな生活展開に置くことにしました。
 最優秀賞のS.H邸は、外観デザイン、内部空間の魅力に加えて、子どもの成長を真正面に据えた住まい方が多くの審査委員に高く評価されました。敷地の北側は駐車場と薪置き場とした機能的な顔、一方、南側は菜園や遊び場、日高山脈の眺望を確保した暮らしの顔といった二つの顔をうまく演出しています。
 優秀賞のS.N邸は、わが家の実現に向けて建築主と設計者の話し合いが読み取れる点。K.M邸は、建築主が設計者に明るさ、暖かさ、一体感、家族感の実現を要望の骨子として伝え、それが建築設計にうまく表現されている点。O.M邸は、夫婦二人の平屋建ての住宅であり、高齢化を見据えた住まいのあり方を追求している点が高く評価されました。
 なお、奨励賞は、地域と調和する特徴のある作品を選んだもので、いわば「地域賞」の意味合いが強いものとなっています。
 今後、北方型住宅がますます発展していくことを祈念いたします。

最優秀賞

第2回北方型住宅賞 建築主/S.H
設計者/Sa design office一級建築士事務所
施工者/(株)大野建設  所在地/中札内村
敷地面積/701.17㎡ 延べ床面積/98.48㎡
構造・階数/木造1階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 細長い平屋の住宅を一文字に配置することで、広い敷地を南北二つに切り分け、北側の機能的スペースと農地に面する南側のプライベートスペースという二つの顔をつくった。東西に延びる23m の廊下には南に面した大きな窓が並ぶ。この廊下は家全体の広がりを感じられるようにする「しかけ」であり、隣接する部屋同士が廊下で反射した音や気配を感じられ、適度な家族の距離を確保する空間となっている。

優秀賞

第2回北方型住宅賞 建築主/S.N
設計者/メグロ・アーキ・スタジオ
施工者/拓友建設(株)  所在地/札幌市
敷地面積/272.81㎡ 延べ床面積/203.22㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 5人家族みんなが集まれる広々としたLDKを中心に構成された住宅です。吹き抜けから朝日が差し込むキッチンや、ゴロリとくつろげるタタミ敷きの小上がりは、リビングに居る家族とつながる空間。2階にも家族それぞれの個室の中心に多目的に使えるホールを配置しました。上下2つの大きな空間により、家族だけじゃなく、沢山のお友達も集える住宅です。

優秀賞

第2回北方型住宅賞 建築主/K.M
設計者/一級建築士事務所エネクスレイン/enexrain
施工者/小松建設(株)  所在地/室蘭市
敷地面積/222.85㎡ 延べ床面積/102.95㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 建築主の要望の4つの骨子である、「明るさ」、「暖かさ」、「一体感」、そして「家族感」を実現するために、南西方向に吹抜けと断熱性の高い大きな開口部を4つ配置し、日照時間が比較的少ない室蘭においても、できるだけ多くの光と日射を取り込むことを最重要課題とした。熱損失を抑えるため、家の形状は単純な直方体とし、10年後を見据えた高断熱を施すことで低燃費な住宅を目指すとともに、夏に吹く東西方向の風を取り込めるように、窓の開き勝手を含めて通風にも配慮している。

優秀賞

第2回北方型住宅賞 建築主/O.M
設計者/共同設計 M&M ASSOCIATES、
    須藤建設(株)SUDO設計
施工者/須藤建設(株)SUDOホーム
所在地/伊達市
敷地面積/728.59㎡ 延べ床面積/149.04㎡
構造・階数/木造1階建
サポートシステム登録年度/H20年度


[設計趣旨]
 米国西部の大牧場主の家をモチーフにした平屋の内部は、多目的なワンルームの仕様に。LDK に隣接する主寝室と洋室の間にはドアや仕切りを設けず、ご夫妻はロールスクリーンでフレキシブルに空間を楽しんでいます。
 どっしりしたカラマツの5寸柱と梁が、大空間の美しいアクセントに。中央に配置した薪ストーブとともに、存在感をフルに発揮しています。
 「自然のもの、北海道のものを使いたい」という施主の希望どおり、7割が北海道産の木材を使用。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/S.K
設計者/トロッコ一級建築士事務所
施工者/大平洋建業(株) 所在地/長沼町
敷地面積/1551.15㎡ 延べ床面積/132.08㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 札幌郊外ののどかな丘陵地に建つ、三人家族のためのアトリエ付きの小さな住まい。周囲の景観から突出しない様、傾斜をもつ敷地の形状に合せた3つの床レベルをもつ構成とし、高さを抑える断面計画とした。単純な切妻屋根や素朴な材料と工法(下川産カラマツ薫煙材下見板張)の外装と相まって、ずっと前からそこに在ったかの様な佇まいとなった。
 内部は1,2階とも回遊性のある平面とし、延べ30坪(アトリエ除く)とコンパクトな住宅ながらも拡がりを持てる様計画した。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/O.Y
設計者/(有)アーキシップアソシエイツ
施工者/(株)ハウジング光陽 所在地/札幌市
敷地面積/132.25㎡ 延べ床面積/104.91㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H19年度


[設計趣旨]
 計画地は、地下鉄駅より徒歩10分の第1種低層住居専用地域内の利便性が良い住宅地にあります。
 敷地面積が132㎡と狭小のため法定容積率80%で105㎡が床面積の限度となります。コンパクトな平面としながら子供の成長に対応した家具による可変性プランとしています。床下暖房とパッシブ換気、自然素材による健やかな室内環境を実現し、小屋裏収納を設けて面積の不足分を補っています。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/N.T
設計者/アトリエアーキファースト(株)
施工者/(株)江田建設  所在地/札幌市
敷地面積/409.39㎡ 延べ床面積/168.41㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 リビング・ダイニング・キッチンをひとつのオープンスペースにまとめ、その中心に階段を配置しています。  吹き抜けのある開放的な階段は上下の関係をよりスムーズなものとし、家族がどこに居てもその様子が感じ取れる。そんな空間の在り方を目指しました。 また、南側のリビングの大きな窓は高断熱・高耐久や省エネルギー性などの数値を確保しながらの物で苦労しましたが、庭との関係が良いものとなりました。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/D.K
設計者/(有)奈良建築環境設計室
施工者/(有)山野内建設  所在地/七飯町
敷地面積/310.00㎡ 延べ床面積/120.01㎡
構造・階数/木造地上1階 地下1階
サポートシステム登録年度/H21年度


[設計趣旨]
 道路から1m程度高い敷地のため、道路の高さに合わせてアプローチ等を造成し、地下に玄関を設け、外階段のない住宅にした。
 道路側に南を向く斜めの壁を計画し、陽の巡る家とするとともに、性格の異なる外部空間を設定した。道内では温暖な地域ではあるが、冬期間に日射に恵まれるこの住宅は、無暖房住宅のレベルに達している。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/T.K
設計者/柳雅人建築設計工房
施工者/(株)橋本川島コーポレーション  所在地/旭川市
敷地面積/286.14㎡ 延べ床面積/132.67㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 日本の伝統的な住宅建築における自然環境との関わり合いを再確認すべく、屋根の形状や軒の重要性、中庭、坪庭を組み込むことによる風通しの確保、内外装の素材の選択、格子の使い方による道路との関係整理など、ちょっとした工夫により、機械的な技術に頼りがちな現代建築を見直すきっかけとなった住宅です。内部空間は室と室の関係を整理し、個々の持つ機能性を充実させつつ、有機的に全体を形成し、その時々により家族が自然に集う場所が生まれる空間作りに心掛けました。

奨励賞

第2回北方型住宅賞 建築主/H.R
設計者/1級建築士事務所ATELIER O2
施工者/(株)サトケン  所在地/厚岸町
敷地面積/842.37㎡ 延べ床面積/109.81㎡
構造・階数/木造2階建
サポートシステム登録年度/H22年度


[設計趣旨]
 敷地は厚岸の小高い丘に位置し、厚岸湾から厚岸大橋、そして大黒島を眺めることが出来ます。クライアントからの要望はこの眺望を居間からゆっくりと眺める生活と家族が家のどこへ居てもお互いの気配を感じるような家にしたいとの要望でした。建物は海に沿った細長い空間とし、それぞれの部屋からは海を眺めるようにしています。屋根の勾配は丘の傾斜に揃え、周辺の環境と歩調を合わせています。また、屋根は1階から2階へと空間をつなげるように覆うことで家族の気配を感じる一体的空間を生み、構造をそのまま表すことで、まるで船の骨格ような形態になっています。

北方型住宅賞